けれど、さすがに踏みとどまった。

 いくら二人きりとはいえ、部屋には誰もいないとはいえ、
 いきなり抱きしめてしまったら、彼女はどうするんだろう。

 嫌われたら元も子もない。

 やっと、仲良くなれて、一緒に帰れて、部屋の中にも入れてくれて。
 やっぱり、段階を踏まないとダメだよな。

 告白さえしてないし。


 カップを手にした彼女を見ながら、埒もないことを考える。

 その時、カップを口にしたままの陽菜と目が合った。

 
 ドキッと心臓の音がした。

 あまりのタイミングの良さに、
 邪なことを考えていたことを見透かされたような気がして。