せっかく、気分が浮上したところだったのに。

「僕が先約。先に約束したよね」

 歩夢に睨まれてしまった。
 お前、態度悪いぞ。

「そうだけど。歩夢はいつも来ているから、たまにはいいじゃない」


 陽菜の言葉に歩夢は顔をぷっと膨らませた。

「だめ。僕だって友達との約束断ってきたんだから」

 友達より陽菜かよ。
 友達大事にしろよ。


「歩夢。わたしより友達大事にしてね」

 陽菜が俺と同じことを言った。

「わかってるよ。大丈夫。友達とはいつでも遊べるから、陽菜は心配しなくてもいいよ」

「逆。わたしとはいつでも会えるんだから」


「違うよ、いつでもは会えないもん。陽菜は部活で、いつも帰り遅いし」

 ああいえばこういう。
 へ理屈こねやがって、わがままなやつ。

「すぐ、そういうことばかり言って、毎日のように夜くるでしょ」


 毎日? 夜?


「それでも。会いたいときに会えるわけじゃないんだから、今日は僕を優先して」


 陽菜は困ったように俺を見た。


 ああ、そうか。
 拗ねられたらあとが大変ってこういうことか。