「ねっ。冷たいでしょ。僕、すごく待ってたんだよ」

「そっか。ごめんね。ホント、冷たいね」

 陽菜はすまなさそうな顔で、歩夢の手を両手で包んで。
 まるで小さい子供にでもするように、温めてやってるようには見える。



 今は2月。

 ちょっと外に出れば、手なんかすぐに冷えることぐらいわかるだろ?


 別に玄関で待ってなくても、陽菜の帰宅を確かめてから来ても遅くはないよな。
 これ見よがしに、ここにいるあたり、なんかずる賢さを感じる。
 わざと陽菜の同情を引いているようで。


「陽菜、ありがと。あったまったみたい。家の中、入ろうよ」

「そうだね」

 
 陽菜はバッグから鍵を取り出した。


 さっきから、こいつ俺の方を見ないな。
 完全無視。

 陽菜も陽菜だ。
 2人の世界を作りやがって。