いつものように、陽菜の玄関の前まで来ると誰かが待っていた。

 見なくてもわかる。
 歩夢だ。

「陽菜、遅いじゃん。待ちくたびれたよ」

 甘えたような声を出して、陽菜を目の前にして手なんか握っている。
 陽菜も当たり前のように握り返して。

 好きにすればとは言ったけど。
 それにしても、べたべたしすぎだろ。

「ごめんね。遅くなっちゃって」

 陽菜は謝っているけど、そんなにかかってはいないはずだ。
 いつもよりゆっくりめだったのは、認めるけど。

 こいつが待っているかと思うと、イラッとしたんだよな。
 俺だって陽菜と一緒にいたい。


「ほら、手がこんなに冷えちゃった」

 歩夢は自分の手を陽菜の頬にあてる。

「ひゃっ」

 陽菜は肩をすくめると、小さな悲鳴を上げた。