「じゃあ、家の中だけにする。だったらいい?」

 それこそ無邪気な顔をして聞いてくる。
 すぐには言葉が出てこない。

 俺はこめかみに手を当てて考え込んでしまった。

 そういう問題じゃなくて、俺が言いたいのは……


「白河くん?」

 どうしたの? 何か悪いことを言った? みたいな顔をして、
 俺の顔を見るな。

 おまえの方が子供だぞ。
 それに女としての自覚が欠落している。


 話がかみ合わない。平行線のまま。
 疲れる。


「好きにすれば」

 
 半ば投げやりに言った。
 どんなに言葉を尽くしても、俺の気持ちなんて、今の彼女には伝わらないだろう。

「じゃあ、そうするね」


 素直に返事をした陽菜。
 こんな時だけ、かわいらしい女になるな。


 でも、こういうところも魅力的だと思ってしまうのは、
 俺も相当陽菜が好きなんだろうな。