「さっきの質問。あいつはいつも陽菜に抱きついてんの? 陽菜も?」

 きちんと聞いておかないと、今夜は眠れない。

「そうだけど。歩夢は弟だし」

 悪びれず陽菜が答えた。

「弟って、血がつながっているわけじゃないんだろ?」

 つながっていても、普通は抱き合ったりしないし。

「そうだけど、でも、弟だよ。ずっと小さい頃から一緒にいて、姉弟のように育ったから、家族みたいなの」


 弟。家族。
 ほんわかとした温かな表情を浮かべて、歩夢のことを話す陽菜に俺は何も言えなくなった。
  

 他人なのに、姉弟で、家族で……
 そう思えるほどの境遇って何だろう。

 苛立っていた気持ちが、心の奥に沈んでいく。
 

「そうか。ごめん。言い過ぎた」


 今日は謝ってばかりだ。陽菜の前ではどうしても下手に出てしまう。
 こんなはずじゃなかったのにな。


 これも惚れた弱みというやつか。