「乗って。」


「うん。」



いつもの先生の車。

助手席に乗り込むと、先生の服装がいつもよりかっこいいことに気付く。

それだけで、胸がドキドキとうるさい。


滑らかに発進した車は、大通りに出た。

もうすっかり日は落ちて、辺りは真っ暗だ。

信号機や車のヘッドライトの灯が目に染みた。



「お腹空いてる?」


「あ、……うん。」


「ならよかった。」



先生はにっこり笑う。



「歩には内緒だぞ。」



そう言いながら、先生は車をレストランの駐車場に滑り込ませた。



「でも、先生。」


「いつも頑張ってる新庄に、跡部先生からのクリスマスプレゼントです。」


「プレゼントなんていいのに。いつも、」


「いいんだ。こっちは大人なんだから。気にしないで奢られとけ!」



その言い方に、思わず吹き出してしまう。


先生に連れられて入ったレストランは、もう予約してあったみたいですぐに席に通された。

夜景が綺麗で、とっても雰囲気のいいお店で。

注文したパスタなんて、この世にこんなにおいしいものがあったんだなあ、というくらいおいしかった。



「そんなに感動するなんて、やっぱり莉子を連れてきて正解だったなあ。」


「私、何でも感動するよ。」


「それが俺にとってはすごく嬉しいんだよ。」



何でも感動するよ。

先生とこうして一緒にいれば、どんな小さなことにも感動できる。

そんな気がするんだ。

先生が隣にいるだけで、奇跡みたいに愛おしい。



「まだあと1時間くらいあるだろ。食べ終わったら、もう一か所莉子を連れていきたいところがある。」


「うん!」



幸せな気持ちでいっぱいで。

この時先生が隠していたであろう切なさに、私は気付けなかった。

ううん、気付かないふりをしていた―――