「いれば」
背中から声がした
あたしは、は?と思い後ろ振り返る
そこにはさっきまで寝息をたてて寝ていたやつがいる
「あたし一人が良いし」
「俺も」
………。
コイツバカなの?
自分が呼び止めたくせに
あたしが呆然としていると
はぁ…
と溜め息をして起き上がる
「俺帰るね」
クリーム色の柔らかそうな頭の男は
私の横をすぅーと通り過ぎていく
良かった
邪魔者がいなくなって……
じゃなくて!
「ちょっと!あんた
名前ぐらい名乗れ!」
あたしは、クリーム野郎の腕を掴む
ダルそうに振り返る
わっ!
結構かっこいいじゃん
「何?ナンパ?」
は?
「なんであんたにナンパしなきゃいけないのよ!」
「…黙れ、メスブタ」
………。
メスブタですと!?
「じゃーね、ブーちゃん」
「ちょっと!」
「っんだよ」
不機嫌にあたしを睨む
待って
あたしは名前聞いただけ
なのになんでクリーム野郎にメスブタなんて言われなきゃいけないのよ!
「ふざけんじゃないわよ!
あたしには名前があるの!
矢野七っていう!
それに何?その頭!
校則違反!」
あたしは言いたいことをババッ!と言った。
「はぁ」
なんなのコイツ!
さっきから溜め息ばかり
「地毛だし、これ
じゃーね七ちゃん」
ガチャン!
屋上のドアが重く閉まる
「七!おはよー」
クリーム野郎と会ってから授業に出る気にもならず
そのまま帰ったあたしは次の日学校に来た
真澄は嬉しそうにニコニコしながらあたしの近くに来た
「真澄なんか良いことあった?」
「良いことって言うか
今日転校生くるんだって!」
真澄はそう言って教えてくれた
転校生ね…。
ガラガラ
担任の先生が教室に入ってきた
あたしは真澄と別れ
自分の席につく
「先生!転校生って女!?」
クラスの男子が聞く
「もう話聞いたのか
まぁいい
入れ」
そう言われて入ってきた転校生
え、待ってよ
嘘でしょう!?
「今日からこのクラスの仲間になった
石井晴(いしいはる)だ」
「く、クリーム野郎!」
あたしは思わず立ち上がり
クリーム野郎を指差して叫んだ
皆の目線があたしに移された
「……。メスブタじゃん」
メスブタ…?
あいつ!
「なんだ、矢野知り合いか!
ちょうど良かった
矢野の隣一個席あいてるからそこに石井座ってくれ」
待ってよ!
知り合いじゃないし
あたしがそんな風に思っていると
クリーム野郎はダルそうにあたしの隣の席に腰掛けた
「……何見てんの?」
「く、クリーム野郎…」
「あんた耳あんの?
一分前に名前言ったよ」
はぁ…
と溜め息をついた
ムカつく
何でこんなに偉そうなのよ!
「知ってるわよ!
石井晴でしょ!
あんたこそあたしの名前…」
「七」
は?
いきなり言われてあたしは呆然とする
「あと、フルネームで呼ばないで」
最上級にムカつきます
「ごめんなさいね!
石井君!」
「キモ、なに石井君って?
晴だし名前」
フッと鼻で笑いながらあたしを見る
もう絶対に関わらない!