あたしは歌った。




適当で、多分出鱈目で、音痴で、
最悪だったと思う。


だけどみんなは途中でやめようとか、
笑ったりとかしなかった。


気付くと一曲全部が終わってて、
あたしは息を整えて座り込んだ。





「た・・・のしかった・・・・・・」


「すっげぇっすよ!!麗華さん、上手っすね!!」


磯部くんが興奮したようにあたしに言った。


嘘・・・?


全然ダメだと思ったのに・・・。


もしかしてお世辞?


これだから年下っていうのはダメなんだ。


すぐ目上の人のご機嫌をとろうとして・・・。



「さすがREI。やっぱり、天才だな」


「え・・・?」


武田くんがスティックを置いてそういった。


あれ?
武田くんまで?


「だからいっただろ。こいつは出来るって」


亜貴がみんなに向かってそういう。


何これ?
みんなであたしをからかってんの!?



あたしが混乱していると、
祐兎がそっぽを向いて煙草を吸い出した。



「あれ?モッチー、どうした?」


「・・・別に」


「もしかして、モッチー、惚れた?」


武田くんがからかうようにいった。



ちょっと!!そんなこと言わないでよ!!


「ああ」


祐兎はこっちを向いて、あたしに近付いた。



“ああ”って?


どういうこと!?



ていうか、近い、近い!!



あたしが反射的に目を瞑ると、耳元で声がした。






「声がな」





「は・・・?」




何?声?

あたしがぽかんとしていると、
馬鹿にしたような祐兎の顔がそこにあった。


「何?もしかして勘違っちゃった?
 別にお前に惚れたとかじゃねぇからな」


からかうように笑われ、あたしはだんだん腹が立ってきた。


あー。
そうですか。


“あたし”じゃなくて、
“あたしの声”に惚れたと?


ムカつく!!!


あたしが怒ったようにじっと祐兎を睨むと、
祐兎があたしを見て、静かに微笑んだ。