【落し物】
美弥「ないよぉ~、ないよぉ~……」
湯浅「? どうかしたか」
美弥「あのね、みゃーのね、スマホのストラップがないの」
湯浅「みゃ、みゃー……?」
美弥「みゃーは美弥のことだよ! キリちゃん同じクラスなんだから分かるでしょお!」
湯浅「キリちゃん……!?」
美弥「あれ? キリちゃんだよね? まぁ、この際何でもいいの、そこは」
湯浅「俺は湯浅 桐生だが……」
美弥「ほら、キリちゃんじゃーん……って、そうじゃなくて! みゃーのストラップがないの!!」
湯浅「……何処かで落としたのか?」
美弥「えー、分かんない。ずっとポケットに入れてたもん」
湯浅「どのくらいの大きさ?」
美弥「…………このくらい」
湯浅「こ、このくらいって……軽く缶ジュースくらいの大きさはあるぞ! どんだけでかいの付けてたんだ!」
美弥「だってだって、みゃーはアホの子だから分かりやすいの付けてないとすぐに物なくしちゃうよーってはるるんが~」
湯浅「全く、それ自体をなくしたんじゃ意味が無いだろ……はるるんって誰だ……小花さんの友達か?」
美弥「はるるんはみゃーのイトコだよー! お隣の1組にいるのー」
湯浅「1組にはるるんなんて呼ばれてる女子生徒なんて居たかな……」
真白「あれー? 会長さんだー」
湯浅「あ、あぁ。中原くんと間宮くん」
七世「そんなところでしゃがんで何してるんすか?」
美弥「キリちゃんはね、みゃーの落としものを探してくれてるー」
真白「みゃ、みゃー……?」
湯浅「それに関しては話してると埒があかないので、気にしないでくれ」
真白「そ、そう……どういうの落としたの?」
美弥「あのね、このくらいのね、大きさのね、ピンクと黄色の猫の人形のやつ」
七世「……え、それって」
湯浅「む、何か心当たりがあるのか?」
七世「……今職員室行ってきたんだけど、山田(2組の担任)の机の上にそれっぽいのが置いてあったような」
美弥「……あぁあ!!」
湯浅「!? な、なんだ……いきなり大声出して」
美弥「そういえば、大きすぎるからってさっきヤマさんに没収されたんだった!!」
3人「「「…………」」」
美弥「みゃー、アホの子だからすっかり忘れてたよー」
湯浅「そうか……まぁ、落としてなくて良かったな」
美弥「でもでも、没収されちゃったんだよね。返ってこないんだよね……」
真白「え、泣くの……!?」
美弥「どおしよう……大事なやつなのに……みゃー、悲しくて死んでしまうよ」
湯浅「…………」
七世「そこに居る生徒会長と一緒に謝りに行けば、きっと山田も許してくれる」
美弥「えっ!」
湯浅「なっ……間宮くん!?」
美弥「えー! キリちゃんって生徒会長なのー!? すごいねぇすごいねぇ! じゃあキリちゃんと行けばヤマさん、みゃーの猫返してくれるかも!」
湯浅「はっ……え、ちょ」
七世「頑張れ会長」
湯浅「間宮くん君はなんて余計なことを……!」
真白「あれだね、変なのが多いんだ。うちの学校……」
【従兄弟】
春太「おっせえよー! 提出物出しに行っただけなのになんでそんな長いんだよ」
真白「いや、なんか……そこの廊下で生徒会長が変な子に絡まれてたから」
春太「変な子? 鈴木のこと?」
真白「いや、鈴木はなんていうか……変だけど馬鹿ではないじゃん? その子はもっとこう……アレっぽい」
七世「濁すの下手くそか、普通に馬鹿っぽいって言えば」
春太「誰だよそれ~可愛い?」
真白「またすぐそうやって……でも、小柄で結ってたけど髪が長くて可愛かったかな」
七世「なんかどっかで見たことある感じなんだけど……」
春太「えー、ますます気になる。名前とか聞かなかったの?」
真白「聞かないよお。あ、でも自分のこと"みゃー"って呼んでるみたい!」
春太「……みゃー……」
七世「………春太?」
春太「…………」
真白「……どうかした?」
春太「……それ、俺の従兄弟だ……」
真白「えぇー……!!」
七世「従兄弟、隣のクラスに居たんだ」
春太「まぁ……なんていうか、アホの子だからアイツ……その」
七世「だいたい一言話しただけでそこらへんは理解した」
真白「なんていうの名前」
春太「えーと……小花 美弥? 俺の父の兄弟の娘」
真白「へぇー……従兄弟だったんだ」
春太「中学から一緒だけど、アイツアホだからあんまり関わらないようにしてたからな」
七世「どうりで……なんか春太に近いものを感じた」
春太「なんだよそれ! 俺はあそこまでアホじゃねぇぞ!」
真白「すごい厄介そうな子だから……覚えられてないといいな」
春太「大丈夫じゃね、2歩歩くと大体のこと忘れるからアイツ」
七世「ニワトリでも3歩なのに……」
真白「さすが春太の従兄弟……」
春太「どういう意味だ」
【小花 美弥♀−こばな みや−】
2月22日生まれ B型 155cm
春太の従兄弟。
自己中心的なアホな子。
好き→自分・可愛いもの
嫌い→可愛くないもの・悪いこと
【修学旅行編】
【集合】
春太「……俺、三門 春太。今、朝の5時……死にそう」
真白「中原真白も右に同じく~」
七世「…………」
春太「あれ……七世いる?」
真白「居るけどめっちゃ機嫌悪そう……」
七世「いや……悪くねぇけど」
真白「機嫌悪くない人は眉間にしわ寄せないんだよお……」
春太「てか5時って……5時集合って……辛っ」
桜子「おはよう3馬鹿」
白雪「わぁ、皆眠そうだね~」
春太「知ってるか、5時集合ってことは起きたの4時だぞ。しかもそのたった1時間のうちに、荷物の準備して、家族への別れを告げて、スマホの充電しなきゃいけないんだからな」
桜子「……そういうことは前の日にやっておきなさいよ」
真白「桜子はあまり眠そうじゃないね」
桜子「そ、それは……」
白雪「ほら、桜子こういう行事好きだから。楽しみにしてると寝なくても大丈夫なタイプの人だから」
桜子「バラさないでもらえる白雪!?」
白雪「へへ、大丈夫。わたしも楽しみだったから同じだよ~」
真白「……女の子がいると空気変わるな~、七世は相変わらず半目だけど」
七世「……んぁ?」
桜子「旦那が半目ってどーよ」
白雪「えっ、すごく可愛い(本気)」
桜子「………そう」
春太「ふぁあ……4泊5日このメンバーかよ。大丈夫かな、俺。ホテルで襲われたりしないかな俺」
桜子「誰がアンタを襲うっていうのよ……」
春太「えっ」
桜子「あたしを見るな! 百歩譲って襲うなら真白にするわ!」
真白「ビャッ……!」
春太「かわいそうに! 真白が震えだした!!」
桜子「本当に襲うわけ無いでしょ……!! あぁ、もう! 5日もあんたらに付き合える自信がない!」
春太「ははは、残念だったな! 同じ班になった以上最後まで面倒見てもらうからな!」
桜子「自分の事くらい自分で面倒見なさい!」
春太「お、俺らのことじゃねぇよ!」
桜子「……は?」
白雪「もう1人いるもんね、わたし達の班……」
桜子「……あ」
鈴木「さっきそこの通学路でカマキリのたまご見つけた……これ、空港の荷物検査に引っかからない? 持っていける?」
真白「…………置いていきなよ」
【飛行機】
春太「あれ、俺の右隣って真白だったっけ」
真白「そうだけど……」
春太「……俺さ、中学校の修学旅行で飛行機乗ったとき、何飲みますか? って聞かれて、周りがオレンジとかリンゴ選んでるのにコーヒー選んだんだ」
真白「もう少しで飛ぶってときに、なんか不安になるエピソード出さないでもらいたい」
春太「別にコーヒーは飲めるんだ。苦いけど」
七世「真白、椅子少し倒すよ」
真白「あ、うん大丈夫」
春太「しかもホットだった。しかもミルクと砂糖使いますか? って聞いてきたCAさんがすごく美人だったんだよ」
真白「良かったじゃん。美人好きじゃん」
春太「ものすごくミルクと砂糖が欲しかったのに、美人と会話してるという恥ずかしさで、思わず使いませんって答えたんだ」
真白「そこまで来るとただの馬鹿なんじゃない?」
春太「仕方なくブラックコーヒーを飲むハメになって、残すわけにもいかず……」
真白「仕方なくって……ほぼ自分の責任だけど」
春太「空中で揺れる機体に乗ったまま、熱々のブラックコーヒーを飲み干して俺は……」
アナウンス《まもなく当機は発進いたします》
真白「俺は……?」
春太「右隣に座っていた玉木くんの制服に吐いた」
真白「ちょ……っ! 誰か……! 誰か席変わって……!! だ、誰か……!」
桜子「うるさいわねぇ! 静かにしなさいよ真白! もう動き始めたんだから席なんて変えられるわけないでしょ!」
真白「だ、だって……このままじゃ俺……春太に汚されちゃう……」
周り「「「「……!?」」」」
春太「激しく誤解を招く言い回しはやめていただきたい」
真白「誤解じゃねぇよ。そのままの意味だろ……あぁ、父さん母さんごめん……」
春太「大丈夫だって! コーヒーを飲まなきゃいい話だから! ちょっとお前のこと脅かそうとしただけだから!」
真白「本当かよお……俺その玉木くんみたいに修学旅行中ずっとゲロまみれの制服で行動するなんて嫌だよお……」
春太「大丈夫だ。アイツは4泊5日間学校の指定ジャージで行動してたから。おかげで集合写真玉木だけ浮きまくりだったけどな」
真白「あぁ、かわいそうに……ていうか、吐くなら自分の所では吐けよ」
春太「そんなことしたら俺の制服が汚れちゃうだろ! 向こう行って学校の指定ジャージでナンパなんて出来ねぇよ!」
真白「修学旅行でまでナンパすんな……!!」
【せんべい】
鈴木「鹿が……、鹿がわたしに迫る……!」
湯浅「そんなにたくさん鹿せんべい買うからだよ。ていうか1組集合写真撮りに行ったけどなんでここにいるんだ君は」
鈴木「食われる前に食す」
湯浅「あっ、鹿せんべいを食うな……! お腹壊したらどうするんだ!」
鈴木「桐生くんも食べたいの? どうぞ」
湯浅「俺は食べないけど……」
鈴木「う~、めっちゃ押される~、なんか怒ってる~」
湯浅「それ食べてるからだろう」
鈴木「はい、桐生くん写真撮って写真」
湯浅「ここで写真撮る前に自分のクラスの集合写真を撮りにいけ」
鈴木「早く早く、おじいちゃんの仏壇に飾るから」
湯浅「……君のおじいさん、まだ元気だろう。先週スポーツジムから出てきたの見たぞ」
鈴木「はいチーズ」
湯浅「…………」
鈴木「撮れた?」
湯浅「まぁ……だから早く自分のクラスにだな……」
七世「あ、いた」
鈴木「あら……こんにちは」
湯浅「ま、間宮くん」
鈴木「走ってきて一体どうしたんだい」
七世「……お前を探しに来たの。集合写真撮れなくて皆困ってんだから」
湯浅「そら見ろ。だからあれだけ早く行けと……」
鈴木「えぇ、まだせんべい残ってるよお。鹿がわたしを手放してくれない」
七世「んなもんそこらへんにばらまけ」
鈴木「もったいないよお、まだ食べれるよお」
七世「自分で食ってたのかよ……じゃあ、あれだ。会長にパス」
湯浅「えっ」
鈴木「美味しくいただいてね、桐生くん」
湯浅「えっ」
七世「あとそれ先生たちのカメラだろ。担任困ってたぞ」
鈴木「だって自分のカメラ間違えてキャリーバッグに入れちゃったんだもん」
七世「後でホテル行ったら忘れないようにリュックに入れとけよ」
鈴木「はーい」
湯浅「えっ……ちょっ……鹿が……」
鈴木「ばいばーい桐生くん」
湯浅「鹿っ……う、うわ! 鹿が……!!」
【ホテル】
美弥「あぁ、もお……途方に暮れることしかできない。みゃーは野宿……」
春太「……げっ」
真白「げ?」
春太「俺らの部屋の前に……アホがいる」
真白「アホって……あぁ、この前の! 春太の従兄弟だっけ」
春太「なんであいつがここに居るんだよ……5階は男子フロアだろ」
真白「な、なんでだろう……」
美弥「あぁ……このままだとみゃーは泣いてしまうよ……眠くなって天使が迎えに来るよ……」
春太「お、おい……」
美弥「わわ、天使!」
春太「誰がだよ!」
美弥「あっれー、はるるんじゃーん! ちょっと久しぶり~! 元気ー? みゃーはね、すごく健康!」
春太「そ、そう……そのわりにさっきまで死にそうな顔で丸まってたけどな」
真白「どうかしたの? ここ男子フロアだよ」
美弥「え、そうなの? 別に夜這いとかしにきたわけじゃないんだけど」
春太「こんな堂々と夜這いしに来る奴もいねえと思うけど」
美弥「あのね、自分の部屋がどこか分からなくってー、先生に聞きに行こうと思ったんだけど先生の部屋も分からなくってー」
春太「迷子か……」
美弥「だからとりあえず生徒会長に聞けば分かると思って聞きに来たんだけど、キリちゃんの部屋も分からないから、ここで救助を待ってた」
真白「あ、あの……」
春太「みなまで言うな……あの、本当アホなんだこの人……なんかごめん」
真白「いや……春太は悪くないよ……」
美弥「はるるん、みゃーの部屋分かる?」
春太「いや、普通に知らないんだけど」
美弥「えー、じゃあみゃーの部屋わかる人が来るまでもう少しここで待ってみるねー」
春太「ここ俺らの部屋の前だし、ここにいてもお前が望んでる人は永遠に現れないと思うぞ」
美弥「えっ、そんな……」
湯浅「君たち、そこで何してるんだ……?」
真白「あ、会長さん」
春太「助かった……」
湯浅「……? なんで男子フロアに小花さんが?」
春太「自分の部屋が分からなくなったんだと。これ会長さんとこのお子さんでしょ」
湯浅「産んだ覚えはないが……」
春太「大丈夫、大丈夫。気付いたら母親だったってことよくあるから」
湯浅「父親ならまだしも、母親は絶対ないだろ……!」
春太「とりあえず俺らこれから風呂入らなきゃダメだし、めんどくさいし……会長さんにパス」
湯浅「えっ」
真白「ごめんね会長さん」
湯浅「えっ」
美弥「たぶんだけどね、みゃーの部屋は女子フロアにあると思うのよねー」
湯浅「……なんか、今日はめんどくさいものをパスされることが多いな……」
【女子部屋】
桜子「なんか普通に居るから普通につっこまなかったけどおかしいわ」
七世「なにが」
桜子「あんたが女子部屋に居ることに決まってんでしょ!!」
七世「えー、だって自分の部屋行こうとしたら部屋の前になんか変なの(美弥)落ちてて。春太も真白も荷物取りに行ってて、まだ戻ってこなかったし。関わりたくないなと思って」
桜子「仮にここに白雪が居たら、不本意だけどまだ納得できるわ……だけど白雪は今鈴木さんとお風呂行ってて、あたしと七世の2人じゃないの!」
七世「2人きりだと俺と桜子に間違いが起きるとか?」
桜子「なっ……ん、んなわけないでしょ! このむっつりが!」
七世「はは、ひでぇ。つか桜子は? 風呂行かないの?」
桜子「このあと班長会議があるから、女子の最後に順番回してもらったの」
七世「お、さすがボス」
桜子「ぶっとばす」
七世「冗談ですけど。あ、そういえば8時から白雪借りる」
桜子「そ。別にあたしに許可取らなくていいけど……あんまり遅くに返さないでよ、先生に見つかると面倒だし」
七世「えー、じゃあ桜子も一緒に行く?」
桜子「なんでよ! おかしいでしょ!」
七世「そう? 俺、桜子になら見られてても普通に白雪とキスできるわ」
桜子「……っ! キ、キスとか言うな!」
七世「あはは、顔赤い」
桜子「……っ信じられない、本当むっつりよね。中学の時からあたしの前だと普通にそういう話するんだから!」
七世「なんでだろー、桜子の前だとあんまり気にならないんだよね。あ、身内的な」
桜子「………はぁ、疲れた。ちなみにそこ鈴木さんのベッドだからあんまり荒らすと怒られるわよ」
七世「鈴木の? じゃあ枕隠しておこう、なんか面白そう」
桜子「あんたねぇ……」
七世「おー、春太から着信。……出る?」
桜子「普通に出ないわよ!」
七世「なんだ、つまんないの」
桜子「……ったく」
白雪「ただいまー……!?」
桜子「あ、おかえり」
白雪「えっ……なんで!? なんで七世くん居るの!? お、お風呂上がり……えっ、髪の毛ボサボサなのに……!」
七世「可愛いから大丈夫だよ」
白雪「やだぁ! ちょっともっかい洗面所行ってくる!」
桜子「行っちゃった……洗面所ならここにもあるのに」
七世「てんぱってたね」
桜子「誰のせいよ」
七世「いたっ、今蹴ったでしょ」
桜子「うるさいなぁ! ……泣かせないでよね……白雪のこと」
七世「……はいはい」