夕焼けを背に、航太をおんぶしている吉井を、
隣から見つめた。
「重くない?ごめん、こんな.......航太いい加減にしろよ!!」
航太はわざとらしく吉井の背中で寝たふりをした。
後で覚えておけよ.........
「かわいいな、航太」
えっ、どこが???
「わがままで困るよ」
吉井は、ははっと笑って、
背中の航太を少し持ち上げた。
「弟がいたら、俺の人生変わってたかもな.......」
そんな.........
踏切を渡って、家の方へとまた歩いた。
航太をおんぶしている吉井を見て、
お父さんにおんぶしてもらった時のことを思い出した。
航太にも、経験させてあげたかった。
お父さんの背中を.........
まだ0歳だった航太には、お父さんの記憶がない。
「航太をかわいがってくれて、ありがとう」
照れくさくて、前を向いたまま吉井に言うと、
「別に。ただ単純に航太がかわいいだけだよ」って、
吉井が優しい声で答えた。
本当に優しいんだな.......吉井って。
ちょっと強引なところもあるけど、
やっぱ、優しい。
「航太、起きな!家に着いたよ」
家の前に着き、寝たふりをしている航太の背中を軽く叩いた。