航太は大きな瞳からポロポロと大粒の涙をこぼした。
そんな泣くほど帰りたくないのかよ..........
「ほら、航太泣かない!帰るよ!」
航太は口をへの字にぎゅっと結んで目をガシガシッとこすった。
「俺、兄ちゃんの弟になる!!」
「はあ???無理だってそんなの!何言ってんの!
ほら、帰るよ!!」
航太の腕を掴んでも、航太は座り込んで立ち上がろうとしない。
その時、吉井が航太の前に背中を向けてしゃがんだ。
「航太、乗れ」
吉井………
「そんなの悪いからいいよ。
航太、ちゃんと歩いて姉ちゃんと帰ろう」
航太はチラッと吉井の背中を見ると、
すぐに立ち上がって吉井の大きな背中にしがみついた。
吉井がゆっくりと立ち上がると、首元にしがみついている航太がニヤッと笑った。
さっきまであんなに泣いていたのに、こいつっ!!
「送ってく」
吉井は航太をおんぶしたままリビングを出て、玄関で靴を履いた。
ちょっと待って……
「おじゃましました!」
お母さんに挨拶をして、急いで玄関に行き航太の靴を持つと、
玄関まで来てくれたお母さんにまた頭を下げた。
「麻琴ちゃん、またいつでも来てね」
「えっと……はい」」
もう一度頭を下げると、
玄関から出て吉井を追いかけた。