お母さんは、仏壇の方に目を移した。
「双子だから、誕生日も一緒でしょ?
類は何が欲しいのかなとか、
成長も一緒でしょ?
類も大人っぽくなったのかなとか、
クリスマスも、お正月も、
類のことを考えてしまう。
瞬に、類の面影を探してしまうの。
そんなことしちゃいけないって、わかってるのに、
どうしても、類を求めてしまう。
ほんとダメな母親。
ちゃんと瞬のことを一番に考えてあげなくちゃいけないのにね」
お母さんは、切なげに笑ってまたお茶を飲んだ。
「あの.........私..........」
「ん?なに?」
お母さんはグラスを持ったまま首を傾げた。
突然大切な家族を失った悲しみ。
私には、痛いほど........わかる。
「私、小学校5年生の夏休みに、父を亡くしたんです」
「えっ........」
お母さんは持っていたグラスを置いて、
真剣に私の話を聞こうとしてくれた。
「突然だったんです。
朝起きたら、父の心臓が止まっていたんです。
本当に突然でした。
もう、8年経ちました。
でも、まだ8年なんです。
私の中では、まだ何も整理なんてついてないです。
もし、父にそっくりな双子の兄弟がいたら、
私は間違いなく、その人に父を求めます。
そんなことしちゃいけないって、わかっていても、
その人は、父じゃないんだと、
どんなに願っても死んだ人は生き返らないんだと、わかっていても、
でも、
どうしても、
私はもう一度、父に会いたいです」