私の前にグラスをひとつ置きながらお母さんが聞いてきた。
「はい、すごく優しいです。
あ、でも私彼女じゃないです。
付き合っているとか、そういうのじゃないので。
ただの、クラスメイトです」
「そうなの」
お母さんは少し暗い顔をして、
また立ち上がってカウンターの向こうへ行った。
「でもこうやって家に連れてくるぐらいなんだから、
きっと瞬の中では麻琴ちゃんは特別な存在なんだと思うけど」
お母さんは、お煎餅とクッキーの入った器を持ってきて、
テーブルにのせた。
「そうでしょうか........」
「そうよ」
お母さんはゲームで盛り上がっている二人を眺めながら、
椅子に座った。
「こんなに瞬が笑っているのを見たの、久しぶりだわ.......」
えっ.........
あんなにかわいくくしゃっと笑うのに、
家では笑わないのか.........
「きっと、私がいけないのね」
お母さんは一口お茶を飲んだ。
「どうしてそう思うんですか?」
とても温かくて柔らかい雰囲気のお母さん。
なんで自分がいけないと思うんだろう。
「いまだにね、瞬を見ると類を思い出してしまうの」