「おじゃましますっ!!!」
大きな声で挨拶した航太は、
躊躇することなく、玄関の中に入ろうとした。
「ちょっと待て!」
私は思わず航太の腕を掴んで止めた。
「なんだよ姉ちゃん!!」
「ちょっと、待ちなって。
ほんとにいいの?」
ここまで来て、やっぱり不安になって航太を引き止めた。
吉井は優しく笑いながら航太の頭を撫でた。
「勝負するんだもんな。
気にすんなって、航太、入りな」
「うん!」
扉を開けていた吉井に促されて、航太は玄関に入り、
ちゃんと靴を揃えて玄関に立ち上がった。
玄関の外から航太の姿を見て、愕然とした。
「ちょっと!!あんた服泥だらけじゃん!!!
やっぱもう一度靴履きな!!」
航太は自分の服を引っ張って眺めた。
「大丈夫だよ、俺んち男兄弟だから、
そんなの気にしないって」
男兄弟...........
玄関の扉を押さえている吉井。
吉井って、兄弟いるんだ。
弟?お兄さん?
どっちだろう.............
その時、奥の部屋からお母さんらしき人が出てきて、
玄関に向かって歩いてきた。