お前もって........
ほんとに、いいのかな。
いや、行きたいけど。
ほんとは、超行きたいけど。
図々しくないかなって、
彼女でもなんでもない女が、弟まで連れて家に上がり込んで、
いいものだろうか。
そもそも吉井に彼女でもいたら、こんなのとんでもない話だし。
いろんなことを考えすぎていたら、
吉井が自転車を引いて、航太と駅の方へと歩き出してしまった。
ちょっと待ってよ!!
少し走って、吉井と航太の後ろに行き、
ゲームの話で盛り上がっている二人を後ろから眺めた。
背の高い吉井と、小さな航太
楽しそうに話しながら歩いている二人の後ろ姿を見て、
もし、お父さんが生きていたら、
こんな感じだったのかな.......なんて、
少しだけ、
ほんの少しだけ胸がじーんとしてしまった。
温かい気持ちになりながら歩いていたら、
家の前を通り過ぎる時、
吉井が突然振り向いた。
「傘、ありがとな。家に置いてきな」
ハンドルにかかっていた私の傘を、
差し出してきた。
航太は家の方に少し走って、
家の脇に停めてある自分の自転車のカゴに、
ボールを入れて、またすぐに戻ってきた。
「うん」
そっと傘を受け取り、
とりあえず私も、傘を航太の自転車に引っ掛けて、
またすぐに戻り、二人の後ろを歩いた。
吉井の家は、踏切を渡って、
少し歩いた住宅街の中にあった。
どっちの隣りがあの綺麗な幼馴染の家だろう......
そんなことを考えながら、家の周りをぐるっと見渡していたら、
吉井が自転車を家の脇に停めて、
玄関の扉を開けた。