しばらくバスケをしている二人を、
少し離れた場所から眺めていた。
すると航太が私の元に走ってきた。
「姉ちゃん!兄ちゃんちWiiあるんだって!!
俺マリオやりてぇよ!!」
えっ。
吉井を見ると、笑いながらシュートしていた。
うちにはゲームというものがない。
親の教育方針なのか、一切ゲーム機がない。
ちなみに携帯もガラケーだ。
「兄ちゃんに聞いたら、行ってもいいって。
俺、兄ちゃんち行きてぇよ!」
「えぇ.........」
「........姉ちゃんもチャンスなんじゃないの?」
小声で言った航太の頭をパシッと軽くたたいた。
「いってぇな!協力してやってんだろ!」
「うるっさい!そんなことしなくていいから!
お家にお邪魔するなんてダメだよ。
そんな........」
航太は口を尖らせて、下を向いて不貞腐れた。
その時、吉井がボールを片手で持ってこっちにきた。
「航太?」
「姉ちゃんが、兄ちゃんち行っちゃだめだって。
俺、マリオやりてぇ」
吉井は真っ黒な航太の手を掴んだ。
「航太、普通のマリオだけじゃねぇぞ」
はっ???
航太は吉井の手を握りしめて、
ぐっと上を向いて、綺麗な黒目で吉井を見つめた。
「マリオカートもある」
「マジか!!!」
「勝負だ、航太」
「俺、ぜってぇ負けねぇぞ!!!」
え、
ええええ?????
二人は手を繋いだまま、公園の脇の自転車の方へと歩き出した。
「ちょっ」
「お前も来るんだろ、早く来い」