「何が?」
「だからその......日曜日。
航太とバスケしてもらって、大丈夫なの?
なんか、予定とかなかったの?」
吉井は、あははっと笑った。
「予定あったら、言わねーよそんなこと」
「それなら......いいんだけど」
それから、なんだか黙り込んでしまった。
吉井も何も話さなくなってしまったから、
しばらく沈黙のまま、まっすぐ歩いた。
「じゃあな!兄ちゃん!ぜってぇ日曜日な!」
先に家の前に航太が着き、
吉井に手を振って、
2階の玄関へと続く階段を上っていった。
「ここ?」
「うん」
「お前んち、歯医者?」
「うん、夜8時まで診察しているから。
土日もやってるし、もし歯のことでなんかあったら、
いつでも来なよ」
吉井は医院になっている1階部分と、自宅になっている2階を見上げた。
小さな歯科医院。
割と評判が良く、だいぶ先まで予約がうまっている。
急患も受け付けているから、
夜8時までの診察だけど、
実際、お母さんが自宅の2階に上がってくるのは、
いつも10時過ぎる。
それが休診日の水曜以外、毎日だ。
「両親二人とも歯科医で、二人でやっていたんだけど、
航太が生まれてすぐに、お父さんが死んじゃって。
だから、今はお母さんと衛生士2人の3人でやってんの」