腰掛けていた柵から立ち上がり、
吉井のブレザーを両手で抱えながら、
二人の元に近づいた。
「ほら、もう帰ろ」
いつまでも吉井のお腹にしがみついている航太に声をかけると、
残念そうに口を尖らせてゆっくりと吉井から手を離した。
「兄ちゃん、またバスケ教えてよ」
航太がぐっと顔を上げて吉井に言うと、吉井は航太の頭をぽんぽんと優しく撫でた。
「またやろうな」
「いつ?今度はいつ?」
「あはははっ、また今度な」
「だから、今度っていつだよ!」
航太は吉井のワイシャツを掴んでぐいぐい引っ張った。
「こら!航太!しつこい!今度って今度なんだよ!
ごめん、吉井......」
航太の腕を引っ張って、吉井のワイシャツから手を離させると、
航太はまた口を尖らせて下を向いた。
すると吉井が転がっていたボールを拾ってきて、
下を向いて不貞腐れている航太の前にしゃがみ込んだ。
「航太の姉ちゃんが、俺と日曜日に会ってくれんなら、
日曜日に航太とバスケできるんだけどな」