坂の下を右に曲がり、まっすぐ歩いた先にうちがある。
吉井が宇崎さんをどう思っているのか、
聞いたらいけない気もしたけど、
聞くのが怖い気もしたけど、
はっきりさせたかった。
はっきりさせて、自分のこの気づきたくない気持ちを、
気づく前に消し去りたかった。
「俺、もう一年以上前に、
とっくに振られているから。宇崎に」
振られている......っていうことは、
好きだったんだ。
ちらっと横目で見ると、吉井はこっちを向いて、ははっと笑った。
今は?
振られてもう、それで気持ちは........
聞こうと思った時、
道の左側にある公園に、
暗い中、バスケゴールの下で、
ひとりでボールを地面についている子がいるのが見えた。
まさか、また.........
「こら!航太(こうた)!!
ちょ、ごめん」
私は吉井から離れて、公園の中に走った。
「姉ちゃん」
航太は私の顔を見ると、ボールをぎゅっと胸に抱えた。
「暗くなる前に家に帰らないとダメだって言ったじゃん!」
航太は口をへの字に結んで、私を上目で睨んだ。
「だってさ!隆太もよっしーもミニバス行っちゃったんだよ!
俺も入りてぇーよ!!
なんで俺はだめなんだよ!!ずりぃーよ!!」
航太はバシッと私にボールをぶつけてきた。
ボールはころころと転がって、砂場の中で止まった。