高校最後の一年は、楽しい一年になりそうだ。
廊下側一番後ろの席で頬杖をつき、
教室を見渡して、
そんなことを思っていた。
だって、親友の春奈と綾香と一年ぶりに一緒のクラス。
超うれしい!絶対楽しい!
帰りのHRが終わると、すぐに二人が私の元に駆け寄ってきた。
「麻琴(まこと)帰ろ」
春奈は背中に背負ったリュックの肩紐を両手で握りしめて、
わくわくしている。
「マック行こうよ!お腹すいたぁ!」
綾香はわざとらしく、お腹に手を当て笑っている。
二人ともテンションが高い。
なぜってそれは、
「もう、超うれしいんだけど‼︎‼︎
3人一緒のクラスなんてさぁ!!」
私もリュックを背負って立ち上がると、
3人きゃあきゃあ言いながら一緒に教室から出た。
すると、廊下で一組のカップルが楽しそうに話しているのが見え、
一瞬で、3人から笑顔が消えた。
「宇崎(うざき)さんとも、同じクラスだね。
春奈......大丈夫?」
綾香がそう言うと、春奈は無理に笑った。
春奈は、宇崎さんの目の前で笑っている、渡瀬(わたせ)くんのことが、
ずっと好きだった。
あの二人は付き合っている。
そう知ってから、もう1年ぐらい経つんだけど、
春奈はまだ、きっと渡瀬くんを忘れていない。