おこちゃま詐欺師野郎の姿が見えなくなると、ふとあることに気付いた。
「なんで知ってるんだろう……」
それは、彼が言った「苗字は……小林?」というフレーズ。
言われた時は特に気にも留めなかったが、島の住人が全員小林姓だということを知ってるみたいな言い方だったなぁ……
――――回想。その2
私が住んでいた平島では苗字は小林オンリー。他の苗字の人は居ない。
だから私は、小学2年まで日本国民全員、苗字は小林だと思っていたんだ。
なので、それが間違いだと知った時は、サンタさんがばあちゃんだったと知った時と同レベルの衝撃だった。いや、それ以上だったかもしれない。
だって、ばあちゃんサンタがくれるクリスマスプレゼントは、ワラ草履だったり、菊の花の造花だったりで、幼心に「なんか違うな……」という疑問があった。
というワケだから、サンタがばあちゃんだとカミングアウトされた時は驚いたが妙に納得したのを覚えてる。でも、小林以外の苗字があると教えられた時は意表を突かれブッたまげた。
それを私に教えてくれたのは、本土から来た分校の若い女の先生。
当時、島の分校には私を含め生徒は5人。私以外は全員男子で、おまけに同級生は居なかったから私の話し相手はもっぱらその女の先生だった。
「なぁ、先生、なんでこの島の人は皆、小林なん?」
「そうだね~先生も不思議に思ってたんだけど……それで、一つ仮説をたててみた」
「かせつ?」