「まぁ、親のコネで入ったんだから仕方ないよな?」

「・・・え?」

驚き顔の私に、男は、ニヤッと笑う。


「北条社長とは、大学時代から友達でね。

君の事は色々聞かされてたよ」

「・・・」


「私の名前は、安西 康弘(あんざいやすひろ)。

北条社長と同い年。営業二課の課長です。よろしく」

「よろしく…お願いします」


差し出された手に嫌々握手した。

・・・だって、なんだかこの人、私の事色々知り過ぎて、

あまりお近づきになりたくはない存在。


でも、私の上司なので、その手を拒否する事も出来ない。

「上野歩さん、新人の指導、宜しくね」

そう言って、安西課長の席に一番近い席の社員に声をかけた。


「はい、宜しくね、綾瀬さん」

そう言って笑ったその笑顔は、とても優しくて、

一目で気に入った。

…この人なら、指導されてもいいな、なんて。