愛海の家に行く途中、

何度も携帯が鳴ったが、オレは取らなかった。

誰からの電話かは分かりきっていたから。


…アパートに着き、車を止めた。

走りたい衝動に駆られたが、ここはアパート。

防音設備もちゃんとしていないであろう、場所だっただけに、

冷静さを保ち、愛海の部屋の前まで歩いた。


…そっとインターホンを押す。

…それに、何の応答もない。


…オレはもう一度、それを押した。

…ガチャ。…静かに、ドアが開いた。


「・・・秀人兄さん」

…泣きはらした目で、オレを見つめる愛海。


「愛海」

「何で来たの」

愛海のドアノブを掴む手が、少し震えていた。

オレはその手をそっとつかんだ。



「胸を張って、愛海を愛していると言ってもいいんだな?」



そう言った瞬間、愛海はオレの胸に飛び込んだ。