『ふざけないでよ!!私は…私は裕二とただただ幸せになりたかっただけなのに!!』
そう言いながらそっとそっと屋上の手すりのほうに行く。
そしてその手すりを乗り越えた。
『美咲ちゃん!!』
『美咲っ!』
『やめろ!美咲!!』
裕二は美咲の方に走る。
そして美咲をそっと抱きしめる。
その手つきはまるで壊れものを扱うかのように優しい。
いつの間にか隣には加恋がいた。
そして裕二はこう言った。
『美咲。やめろ!!確かに俺が約束を破ったのは悪かった。
でももうお前と会うことはないかと思ってて。』
『裕二、辛かった。裏切られた気がして!!』
『俺は別に迷惑とか思ってないから。』
と優しく美咲ちゃんに言っていた。
なぁんだ。悪者は結局私か。
『絢。』
ビクッと肩が上下した。美咲ちゃんと話していた時とはずっとずっと低い声で私を呼んだ。
『絢。お前は言い過ぎだ!!そんなに言うことないだろ!!そのせいで美咲がどれほど辛かったか!お前には分からないだろう。』
悲しくなった苦しくなってここからいやこの場所から逃げ出したくなった。でも私はまだ耐えていた。
『今のお前は美咲よりたちが悪い。』
そう言うと裕二はギュッと美咲ちゃんを抱き寄せた。
もうどうでもいい。
もうこの世界なんかなくなっちゃえ。
『おい。絢!何か言えよ。』
バチッ。
痛い。初めて裕二に叩かれたな…とそう思った。
加恋は『大丈夫!?裕二!!あんた最低ね!絢がどれだけ辛かったか知らないでしょ!』
『あ?知ったこっちゃねぇ!』
『あんたねぇ!ちょっとは絢の気持ちも考えなよ!』
『考えたところでどうなる?』
『ほんっと最低。信じた私が馬鹿だった。』
『っつかさぁ俺、本当はお前の事嫌いなんだよね。』
『ーーもうやめて!!』
だんだんと痛みが頬から頭へと移動する。
うっ…痛い。
嘘…まさかまた?
いろいろな記憶がまた流れ込んできた。
でも前みたいに気を失ったりはしない。
そして私はあの白い世界にあった他とは違う記憶を見てしまった。
『……うっ。……ふ。……いやあぁぁ!!』
私は泣きながらそう叫んだ。
そして意識が朦朧とする。
『絢!』
加恋がそう言ったのが聞こえた。
そして私は力なくその場に崩れだんだんと前に倒れて行く。
『絢!目を開けて!!』
そう言った加恋の声を最後に私は意識を失った。