結局何も覚えてないな。

蘇ってきた記憶が何もかも忘れてしまった。

まるで誰かに切り取られてしまったかのように。

あれから数日が過ぎてるが、悠斗くんにも美咲ちゃんにもあっていない。

裕二は最近ピリピリしてる。

いつも周りに警戒しているかのように。

まるで誰かを失うのを恐れている子供のように。

加恋にもあっていない。

あの日あの瞬間から何もかもが止まってしまった気がした。

私も悠斗くんや美咲ちゃんに怯える日々が続いた。

またお腹を見てみると凄い色の痣が出来ていた。

そのことは加恋にも裕二にも言っていない。

怖い。今度悠斗くんに会ったら本当に殺されそうで…。

今私には力なんてない。

あの日からまたあんまりご飯が食べられなくなった。

またあの地獄のような日々を繰り返すのかと思うとまだあの時に死んだ方がマシだったなと思ってしまう。

ー私は誰に必要とされてる?

ー私は生きてていいの?

ー私が生きてたら誰も幸せにならないんじゃないの?

とかマイナス思考に考えて疑問ばかりが浮かんでくる。

本当に嫌になる。

私はまるで加恋と裕二に距離を取られているかのようなそんな気がしてくる。

最低だね、私。親友と彼氏を信じてあげられないなんて…。

私は今屋上にいる。

別に自殺とかそうゆうのは考えてない。

ただ…ただ…辛かった。1人になりたかった。泣きたかった。
と言う理由だった。

今の私は心身ともにボロボロだ…。

だから、ぼぉっと空を見てるだけで涙が溢れてくる。

私はコンクリートに寝転がり泣いた。

涙は止まることなく溢れてくる。

苦しいよりも悲しみや孤独の辛さの方が大きい。

私はいつの間にか眠っていた。

そういえば最近ろくに寝てなかったっけ?

そんな記憶すら無い。

私が目を覚ます少し前暖かくフワッと香る大好きな匂いがした気がした。

私はうっすら目を開ける。

そこには…

裕二がいた。

でもそこにいる裕二は…

泣いていた。

そして私に謝っていた。

『ごめんな?痛かったよな。
悠斗があんなに本気で女子を殴ったことなかったのにな…。
ごめんな。庇ってやれなくて。

本当にごめんな?』

『いいよ。』

裕二がびっくりした様子でこちらを見ている。
そして急いで涙を拭いていた。

『裕二。泣きたいならちゃんと泣かなきゃ。』

『いやっでも。お前の前じゃ泣けねぇよ。』

『いいから。私は裕二の体が1番大事だから。』

『…』

裕二は私の隣で静かに泣いた。

私はそれを黙って見ていた。