「裕二…、あんた何しに来たの?」

数十秒前に呟いた加恋の低くて冷たい声。

まだ加恋は続ける。

『何?絢に相手されなくなったら美咲ちゃんのところに行ったくせに。

また絢を誑かしにきたの?』

『そーゆー訳じゃねぇよ。』

『じゃあ何なわけ?

絢が誰のせいでこうなったのか分かる?』

『ちょっ!加恋…『絢は黙ってて。』』

『はっ…はい。』

『で?あんたのせいで絢がこんなになるまで苦しんだんだよ?』

『ああ、俺のせいだな。』

『ねぇ!!なんでそんな他人事みたいな返事しか出来ないわけ?』

『あ?別にお前には関係ねーよ。』

『は?関係あるわよ!!私は絢の親友なんだから。』

『だからなんだよ?』

『は?』

『だからって…、カレカノだった俺らの中には入れないだろ?』

『っ!』

痛いところを付かれたらしい加恋が整った顔を歪める。

『入れないよ?でも…、いくらカレカノでもあんたが絢をこんなになるまで苦しませたらカレカノでもなんでも無いでしょ?』

『は?俺がいつ苦しめたんだよ。』

『あんたがいけないんじゃない!

ちゃんと絢を待ってればこんなコトにはならなかったのに!』

『あ?全部俺のせいか?絢がちゃんといつ帰るのか伝えてこないからだろ?』

ピキッ…

私の中の何かが切れた。

『は?言わせておけば何?

だから私何回も謝ったじゃない。

私だって好きでいつ帰るかを伝えるのを忘れた訳じゃ無いわ。

ちゃんと信じて待っていてくれるってそう思ってた。

でも所詮裕二はそんな人だったってコトでしょ?

それにあの時嬉しそうに恥ずかしそうに楽しそうに笑ってたのはどこの誰?

本当さ振り回すの止めてよっ。

好きじゃないのに好きとか意味わかんないんですけど。

どうせ身代わりだったくせに。

今更彼氏ズラ?

ははっ。

笑える。

出てってよ。

もう2度と来ないでっ!!!』

多分私の顔は涙でぐちゃぐちゃだ。

裕二はしばらく驚いていたけど少ししたら悲しそうに顔を歪めながら去って行った。