放送が終わり、昼飯を食べ終わった生徒が次の授業の準備を始める。美希も杏里も気まずそうに片しながら席を立った。と、同時に教室のドアが開く。

「響ッ!」
「!…依織」

肩で息をしながら依織が眉を寄せ俯いた。

「…悪い、気付かなくて。普通は先に葉書に目、通すんだけど俺、そういうの面倒で…」
「バァカ。もう気にしてない」

依織が申し訳なさそうに3人に近づいて近くにあった椅子に雑に腰をかける。

「…悪かった」
「だからもう」
「でもまだ触れないでしょ」

杏里の言葉に依織が顔を上げた。

「杏里、やめ」
「まだ、触れないんでしょ?」
「………」

気まずい空気に美希がオロオロと言葉を探している。暫く流れるのは重い沈黙。クラスの空気もどこかどんよりとしたものだった。

「お〜、席着けェ授業始めるぞ〜って、風間。何だあの放送は。もう少し真面目に…」
「ヤだなぁ、先生。俺真面目っすよ?」

授業が始まる時間になり教師が教室に入ってくる。と、依織はいつものように声を上げて会話を始めた。

「あぁ、お前はそんな奴だったな。ほら、授業始まっから教室戻れ」
「はぁい」

ガタッ、と依織が席を立つ。帰り際、もう一度振り返って「悪かった」と口を開けた。

「…杏里ちゃん、席、戻ろ?」
「………」

美希が杏里の制服の袖を引っ張る。杏里は何も話さず弁当箱を持って自席に着いた。