小さな頃から追ったのは父の背中。テレビ越しにみる父は家にいる時とは違い輝いて見えた。それはきっとテレビの効果なのだろうけど、その光にすごく惹かれた。

「響、テレビは離れて見なさいって何度も言ってるでしょ?」
「…うん」

返事も曖昧に、耳は確実にテレビから流れる音を拾っていた。
チカチカと、目に悪そうなライトの下で広がる音。温かく、柔らかな声。それを支えるように、目立つ事なく、でも自分を主張する父のギターの音に心を奪われた。

“dive”−−ヴォーカルとギターだけの少人数のアーティストで、のちに老若男女問わず絶大の人気を得た最高のアーティストだった。