都市では、ネオンや各地の住宅の光が無数の塊となって輝く。

静かな夜とはいささか言えない、酔っ払いの話し声や、若者の喧嘩など全てが騒音で掻き消される。

そんな、都会じみた場所を抜け、田舎風の田が広がる村に出ると、ひっそりと静かに病院が顔を見せる。

もう何年も前に終わった、廃墟とさえ言われている其処は、ある意味恐怖の対象として見られることもしばしば。

都会が騒音の渦に巻き込まれている中、この病院だけが異様に静かであった。

満月ということもあってか、明るい月明かりが差し込んでいる。
不気味さが、一層増すようだ。

誰もいないはずの病院に、静かな、それでいて存在を強調する足音が響く。

ヒタヒタヒタ、どこかのホラー映画を連想させる。

雲に隠れ、一瞬見えなくなるが顔を出した月が照らしたものとはー、

『一人の男と、真っ赤な足跡だった』

獣じみた笑みを浮かべ、藤原は言った。