初撃を受け止められた真紅の騎士は、跳ね返されるように空中で後方回転しながら着地、私の目の前で両の短剣を構えた。

馬上で剣を握り締めたまま見据える私。

そんな私に対し。

「お初にお目にかかる」

真紅の騎士は殺気を孕んだまま、涼やかな笑みを私に向けた。

…それは、今しがた私の頭を叩き割らんとした男の表情ではない。

まるで散歩の途中に出くわした人間に挨拶するかのように軽やかに、男は言葉を発する。

「戦乙女。お前の噂を聞きつけ、ここまでやって来た。お手合わせ願おうか」

「断る。私には貴方と刃を交える理由がない」

私からしてみれば当然の事だった。

私が剣を振るうのは、両親の復讐の為、小国の為、ひいては自分の為だけだ。

訳のわからぬ男との力比べの為に、私は剣を鍛えてきた訳ではない。

「そうか」

男は笑みを浮かべたまま、一瞬だけ目を閉じ。

「!!」

再び疾風のごとき刃で、馬上の私に斬りかかって来た!!