「もう、戻れないのに。」
それは捨てられたことだけではなかった。
今、この瞬間にはもう、戻れない。だから、私は精一杯生きたい。
「それでも、信じたいんだろ?」
うん。信じてる。
家族だけじゃなくて。奇跡が起これば私ももう少し生きられるって。
「陽信、今週の......」
そのとき、視界が揺らぐ。
話しているうちに雨の音はだんだん静かになって。
この頃には止んでいたと思う。
雨宿りしていた私たちのそばに人はいなくて。
雑音がなくなると静かで。
少し雨の臭いがして
あと、頭が痛い。
真っ暗になる前に見たのは陽信の顔だった。