「お母さんに孤児院に預けられた日も雨だった。何度呼んでも立ち止まりもしなくて。すべてが崩れ落ちた。」
淡い期待が裏切られたの。
「いつか、やり直せるんじゃないか、って。心のどこかでずっとそう、思ってた。」
いつかきっとお父さんとお母さんは一緒になる。
「孤児院に入っても友達も居なかったし話せる人さえいなかった。生きるためのすべてがなくなった気がしたの。」
陽信は私が話をずっと静かに聞いてくれていた。
「そう思えば。春夏冬の家に捨てられたときも雨だった。的場さんはもしかしたら気づいているかも。あの声は聞いたことがあるの。きっと私を柊也の家まで送り届けた召し使いは的場さんよ。」
誰も見送りにも来なくて。私は召し使いが運転する車の後部座席でぼけっとしてた。
『健やかに、お幸せにお過ごしください。いつかあなた様の成長した姿を見ることを楽しみに待っております。どうか、ご無事で.....』
もしかしたらこうなることを知っていたのかもしれない。
「たまに左京が羨ましくなるの。もし私が愛人の子じゃなかったのなら。左京みたいに幸せな暮らしができていたのかも知れないって。」
たまにそんな変なことを思うことがある。