「山田太郎って偽名は何だったんだ?」


秦野の冷静な質問に、ヴェルディ・フー…もぅいいや、山田は、


「日本で一番メジャーな名前だって聞いたから」


答えた。


……空木の爆笑は、「昭和かよっ」と続く。



「とにかく、名前覚えてもらおーか」


えぇ!?!?


さっきの、ヴェルなんとかを全部!?



「じゃないと、秘密を握られた以上、お互いの名前を知っとかないとだからな。

関口凜サンと、空木咲夜クンに、秦野蒼空クン??」



「俺らの事知ってんの??
ま、俺様は有名で当たり前だけど」


空木が言う。


「この学年の生徒の名前は、日本に行く前日に、だいたい頭に叩き込んで来た。

…凜のは、ちょっとど忘れしてたから、さっき聞いたけど…」



ヴァンパイアスキル、テストの時にかなり欲しいわ。


「…てことで、お前ら三人には、俺の名前三十分で覚えてもらうな」


「は!?ふざけんな!」


「…マジで?」


「無理だよ!!」



「じゃ、よーいスタート」



抗議するあたし達には目も向けず、
山田はいつの間にか持っていたストップウォッチのボタンを押した。


やってられるか、と部屋を出て行こうとした空木の肩をつかんだ山田は、満面の笑みで言った。


「…覚えないと、吸うけど?」


尖った犬歯がキラリと光る。


こ、こわっ…。


あたしと秦野は、ブツブツと名前を覚え始めた。



「あぁ?なんで俺様がそんなことしなきゃならねぇんだ」


負けじと山田を睨む空木。


相手はヴァンパイアなのに…。



「日本に来る前日に叩き込んだのは、名前だけじゃないんだよなぁ」


ヤケにニヤニヤする山田。


「あ??」


と、対抗する空木。


「実は、一人一人の個人情報も集めてるんだよなぁー…」



「個人情報ぉ?ふっざけんな、そんなの分かるわけねぇだろ」


ゴホン、と咳をした山田は、急に目を瞑ってしゃべりだした。


「空木咲夜、性別は男。
好きな教科は体育…と見せかけて、実はチマチマした家庭科が好き。あと、ア○パンマングミも好き。毎晩ウサギのぬいぐるみと寝「うわぁぁぁぁぁあ!?!?」


真っ赤っかな空木が、山田の口を全力で押さえた。


あたしと秦野は思わず、吹き出す。


家庭科、ア○パンマングミ、ウサギ……。





……wwwwwwwww。



「これ以上言われたくなかったら、覚えろよな」


「クッソ、俺様が命令とか…」




とかなんとかやって、




*三十分後*