「呼ぶ、な……」



「でも…」



「逃げろ……。俺から逃げて…」


えぇ、逃げるってなんで!?


こんな山田置いてけないってば!!


汗だくの山田は、口元を必死に押さえている。


なに、吐くの!?



「じゃない…と、理性がもう効かな……」


は!?


意味わかんない!!


すると急に、さっきまで苦しがっていた山田が、だらんとなった。


「やま…だ??」


そっと、山田に触れる。



ガッッ



「痛っ」


山田に、手首を掴まれた。


ヤバい、何この力…人間じゃないでしょこんなの!?


あたしの手首に、生々しい痕がついていく。


「山田、離しっ…」


その途端。



お花みたいな、柔らかい香りが広がった。