13歳のシーズン 。
世界最高峰と言われる海外の大会で。
君は、遂に……頂点を極めた。
一番高い表彰台の上でシャンパンファイトする君は、普段冷静なその瞳を細めて。
ただの、少年へと……戻っていた。
後にも先にも、そんなに無邪気に笑う君を。
僕は……
見たことがない。
表彰台を降りた君は、コーチ陣と再び抱き合って。
それから――…
真っ直ぐにこちらへと向かってきた。
「よう、たいせー。おめでと。」
「ありがとう。」
いつもの冷静な…返し。
口の端っこをキュと上げて、分かりづらい喜びを…、不器用な笑顔で表す。
「2回目でダブルマックトゥエルブ(※1)キャブダブルフォーティ(※2)もって来るなんて、マジで度胸あるなあ…。」
「もう後がなかったからね。勝負掛けた。」
「………。スゲーわ、実際。」
「やんないだけで、モトだってできるじゃん。」
「……。まあ、そうだけど……。」
「俺らはきっと、まだまだ行ける。」
「…………。」
静かな闘志を瞳の奥に宿して。
君は…俺を射抜く。
それから、拳を前に突き出して、
にやりと…小さく笑う。
幼き日からの……俺らの儀式。
二人拳を突き合わせて、それから、掌を上下入れ替えながら叩き合って。
最後に――
腕をぐっと押し付け合う。
「次はモトの番だ。」
って……、
自信に溢れた言葉をもって、俺を…引き上げていく。
『ついてこい』って、そう言わんばかりに…。
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※1 「ダブルマックツイスト1260゜」…左足を前にして滑るレギュラースタンスの選手の場合、バックサイド側の壁で行う。(前方に背中を向けた時計回り方向に、ターンや回転をする)
踏み切りから頂点までに前方に1回転しながら、横に半回転し、さらに、そこから着地までに縦に1回転、横に1回転と、合わせて3回転半するトリック(技)。
※2 「キャブダブルコークスクリュー1440゜」…選手の本来のスタンスと逆の足を前(←スイッチ)にして滑り、フロントサイド側の壁で行う。(これを「キャブ」という)前方に胸を開いた反時計回り方向に、空中で横に2回転するのに加えて、縦に4回転をするトリック。