俺は…、携帯をどかして。その、ノートを…手に取った。
たいせーは、自分の当面の目標だったり、メイクしたい技のコツであったり…
自分が思うことを、文字やイラストで書き留める習慣があった。
録り溜めた映像を、何度もストップモーションで繰り返し見ながら…
板の角度であったり、 身体のひねりだったり、下手くそな棒人間の絵と、やっぱり下手くそな…文字を添えて。
ヤツのトリックの数々は……、
優れた身体能力と、
培った感覚と、
それから――…
勤勉な研究の末に、生み出されていたのだ。
くるっとひっくり返して。
表紙を見えるようにすると……
8月〇日~
と、このノートの開始年月日が…書かれていた。
今は…、8月の末。
まだ、書きはじめて…そんなには経っていない。
小学生くらいの時には、お互いの家を行き来して…ノートを開いては、ああだ、こうだと言っていたものだけど…。
中学になってからは…
自ずと、ソレをやめていた。
だって、秘密を盗んでしまっては…
自分の力のなさを、まるで認めてしまうような気がして。
けれど………。
これがここにあるってことは。
たいせーはまた、スノーボードができるって…ことだろ?
暫く…
葛藤を続けて。
高ぶる気持ちを…抑えきれず。一瞬だけ……、と、自分に言い聞かせてから。
そうっと――…
ページを開いた。
「…………は?」
そこに書かれていたのは――……
想像とは、まるで別の…世界だった。