今や吉行だけが知る“真の現実”と“真の答え”がそれであった。

それを『真実』と言うのなら、その『真実』は決して表に出る事はない。

再び、現実を虚像にしか感じる事の出来なくなった吉行には無意味であったからである。

その真実は闇に埋もれ、本来歩くべき道を迷走した挙げ句、吉行の辿り着いた行き先は結果的には同じ場所。


(どうせ全てが虚像だ。結果的には俺の思い通り、俺の死刑は回避出来たじゃないか。なあ……夏風……)


それから僅か一年後……

一審での判決に上告する事なく、吉行の刑が確定した。