「アらタのじゃらくてジツはオエの子ラんすヨ。らから…いじゃ……でスカ」


夏風とよく似た一重瞼を細めながら口にする正人の言葉を、詩織の下半身が信憑付ける。

吉行の思考から現実の背景は消えうせ、空間の中に四人が居るだけの状態になっていた。

何故か信憑性のある詩織の口から出た言葉は、

やはり……「ごめんなさい」であった。


(他の男に跨ってごめんなさい)
(薬を使ってごめんなさい)
(今、腰を振っててごめんなさい)
(他の男の子供を産んでごめんなさい)
(その夏風を殺してごめんなさい)

(愛してごめんなさい)

どんな意味があるのか、また全ての意味があるのか……吉行の頭では“存在してごめんなさい”に聞こえていた。


詩織が発しているのは「ゴメンナサイ」のただ一つの単語。