神経過敏な乳児を世話する困難さは、時に母と子の緊密な絆の妨げになり、発達障害の原因を生む。

詩織に僅かでも“母親”としての愛情が残っていれば回避出来たであろう。


動物実験では、


脳に電極を埋め込まれた出産後のラットは、我が子を放置してまで報酬系の電気刺激を求めるという結果が出ている。


快楽が持つ魔力は母性にすら勝るのだ。

ましてや詩織の愛情の壺には夏風は入ってはいなかった。