引き金を弾いたのは吉行である。
弾かれた銃弾は、目前の正人を打ち抜いた。
銃声の余韻が静かに消えそうになった時、再び静寂を取り戻す前に吉行が口を開いた。
「こんな事なら初めからこうしておけば良かった。死んでくれなきゃ困るんだよ。俺は死なない……死刑はなあ、廃止だってよ」
その言葉を皮切りに騒然たる雰囲気に一変し、大混乱の中裁判は“中止”と云う形で幕を降ろした。
正人は本人の望み通り死ぬ事が出来た。
即死であった。
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