「死刑を廃止させるのかい?」
「ああ、もう準備は整ってるよ」
そこには黒男の余裕を垣間見る雰囲気があった。
「何か意味があるのかい?」
「あるよ。ところで、日本が今度導入する裁判員制度をどう思う?」
話を交わされたスティッチであったが、黒男の事は信頼していた。
意味の無い会話等ない事も……
「あの無意味な政策か?国民感情がどう動くかな」
「感情を口にするのは一時だけだ。日本人は丸め込まれるのが得意だからな」
確かにそうだ。あれ程感情を内で消化出来るのは才能だとスティッチは思っていた。
「でも無意味には違いないだろ?」
「無意味なものに意味を持たせる事は簡単なんだ」
「国家がよく使う手だな」
「そう。という事は、意味の“違う”モノの意味そのものをすり替える事も可能なんだ。それもSubliminal(サブリミナル─潜在意識への印象付け)の一種ってやつだ」
「と云う事は何か他の意味があるんだな」
「ああ、あの制度は“危険”な制度なんだよ……For the people(国民にとって)」
その時、スティッチは黒男の目の奥にある何かが見えた気がした。
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