公判は、高裁での問答と差ほど変わりなく進む流れであった。

しかし大きな違いは、正人を擁護する弁護団の姿がそこにはもうない事である。

無論、正人にとって身に覚えのない弁護ではあったが、今や重光が座っているのは傍聴席である。

弁護をする“必要”がなくなった、というのがその理由だ。

新たな弁護士等用意出来る訳もなく、国選弁護人がただ黙って検察の話を聞いていた。


そして被告人である正人は、居なくなった弁護団を恨むでもなく、ただ“死刑”の判決が出るのを心待ちにしていた。


廃止になった事すら知らずに……