詩織が失った“一つの感情”
夏風への愛情と云う感情は欠落していた。

望まぬ……玩具のような男の精子から産まれた子供。

ひっきりなしに手を患わす夏風は、お荷物としか感じる事が出来ないでいた。

ホテルの一室での汚れた情事も、あまりの鳴き声に追い出される始末であった。

吉行は深夜の帰宅が常時である。

もぬけの空の自宅へ始めて正人を入れたのは一週間程前の話だった。