最近の詩織の様子の違いには気付いていた。
(お嬢様育ちの詩織に病弱な娘の初産じゃ、あいつも精神的に参るのも無理ないな)
詩織は以前に比べ、情緒不安定でヒステリックになっていた。
時折、鬱にでもかかったように思い詰めた雰囲気を漂わせ、かと思えば翌日には無邪気な子供のようにはしゃぎ、上機嫌を露わにした。
吉行はそんな詩織を見て、全て妊娠・出産・育児の苦労に原因を転換していた。
(今日はゆっくりさせてやろう。酒でも飲んで愛してやろうか……)
吉行は大事そうに人形を助手席に置いて帰路を急いだ。
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