その日の吉行は浮かれていた。 いつもよりずっと…… 自分の“存在”から産まれた“存在”が彼の虚無感を消そうとしていた。 まるで空間に自分一人が漂い、支えも、そして方向すらないような感覚に“景色”を与えていた。 初夏の風に乗って産まれた彼女を『夏風(なつか)』と名付けた。 初めての雛祭りであった。