詩織の願望が絶望に変わった時、それまで懸命に保っていたほんの僅かな理性の箍(たが)が緩み、同時に“一つの感情”を失った。
人とは……、因果であれ何であれ、的を得たきっかけさえあれば、精神はいとも簡単に崩壊する。
側に逃げ道がなければ、最悪は“死”を選ぶ事も有り得るのだが、詩織には確固たる逃げ道があった。
寧ろ求めていたとも言えるその逃げ道。
産院からの退院後、間もなくして求めたものは、吉行の胸ではなく、知性の欠片もない青年が持つモノだった。
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