濱野屋は競艇場のすぐ近くにあるパチンコ屋にいた。
競艇場からでてから二時間ほど過ぎている。
彼はスロット台に三万円飲み込まれていた。
彼の財布の中には朝買った競艇の舟券五枚と、三万円しかなかった。
彼はあと二時間半ほど時間を潰さなくてはならない。
競艇場からさっきの二人がでてくるまで。
三万円というのは心許ない金額だった。 だが、パチンコ屋の目の前には必ずATMがあることを彼は知っていた。
所詮ギャンブルは、カモられる場所である。
カモから金を引き出せるだけ引き出す為に、ギャンブル場のそばには必ずATMがある。
そして負け犬達は、近くにあってラッキーだと、喜んで金を下ろす。
彼らはスタート地点に立つ前に、もう既に負けている。
負けると分かっている勝負に、自分の財産をかけることまでして、時間を埋めたがる人間がなんと多い事だろう。
彼らは時間を埋める為だけに、金と、それ以上のものを犠牲にしている。