「第一レース、締め切り、1分前です」
アナウンスが流れた。場内少しばたばたし始めた。
彼女は券売機の三人目に並んでいた。順調に列は進み、次が彼女の番になった。だが、彼女の前の初老の男性のマークシートは何度券売機に入れても吐き出されてしまう。
マークシートのどこかに不備があるのだろう。
彼女は明らかにイライラしていた。
舟券発売の終了を告げる音楽が鳴りだした。彼女は初老の男性に話し掛け、彼のマークシートを見てやり、不備を直して券発売に入れてやった。ぎりぎりで彼の舟券は購入できた。彼女は男性のお礼にも取り合わず、札とマークシートを券発売に突っ込んだ。札とマークシートは無情にも吐き出された。
彼女はがっくりと落ち込んで券発売を離れた。