濱野屋は百円玉といっしょに競艇場の入場ゲートを通り抜けた。
入場ゲートのほうを気にしながら、場内の奥へ足を進める。 小さなテーブルのようなものがいくつかあり、そこには鉛筆と、舟券を購入する為の番号を記入するマークシートが置いてある。
彼はマークシート数枚と鉛筆を手にとって、ビリー・ホリデイに命令された数字を書き込んでゆく。
1レース、③-①、②、④、⑤、⑥-全通り、五千円。
場内にあるモニター画面には、配当が表示されていた。
濱野屋が書いた数字は全て百倍以上のものだった。
彼は券売機にマークシート五枚と、十三万円を入れた。五千円札が一枚だけ戻ってきた。
彼の財布はずいぶん薄くなった。
彼は十二万五千円が帰ってくるか、非常に不安だった。
場内アナウンスが流れ出した。
「場内のお客様にご案内申し上げます。あと10分で、第1レースの舟券の発売を終了致します。締めきり間際になりますと、窓口が大変混み合いますので、お早めにご購入下さいませ」
濱野屋は入場ゲートから目を離さなかった。
しばらくすると、長い髪の毛を茶色に染めた女が小走りで入ってきた。
歳は21、身長158センチ、美人ではないが、まあ可愛いタイプといっ